Jul. 2020

Techno Box 16

小型貫流ボイラWILLHEAT(ウィルヒート)

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徹底した顧客目線で
技術革新の壁を越える

川重冷熱工業が2019年に発売した小型貫流ボイラ「WILLHEAT(ウィルヒート)」は、「各種の性能指標を1%上げるのも難しい」と言われるほど技術が成熟しているボイラでなお、大きな技術革新が可能であることを示した製品だ。
燃料のエネルギーの何パーセントが蒸気エネルギーになったかを示すボイラ効率は、従来の98%から99%となり業界最高水準を達成。この「1%向上」は、排熱で事前に水を温める「エコノマイザ」の形状の工夫や、ボイラの燃焼と給水の制御に「PID(比例・積分・微分)制御」を採用することなどでもたらされた。換算蒸発量(3t/時)が当社従来機(Ifritシリーズ)と比べると、ボイラ缶体や機能部位の小型高性能化などにより設置面積は35%もコンパクトになっている。また年間の燃料費は約50万円も少ない。

蒸気使用量の少ない時でも燃焼を維持できる最低燃焼量(ターンダウン比)は、5対1、つまり20%が主流だ。しかしWILLHEATは7対1、約14%まで燃焼を絞り込める。ボイラは燃焼・停止を繰り返して蒸気をつくるよりも、燃焼し続けて本体温度を保持していた方がランニングコストは安くなり、CO2発生量も抑えることができるため、ターンダウン比の向上は利用者メリットが大きい。
また独自の「旋回+遠心分離反転式気水分離器」によって蒸気の乾き度は99.5%以上を実現した。蒸気は乾き度が高いほど多くの熱エネルギーを備えており、エネルギーとしての質が高い。それだけ蒸気を利用する現場では、生産効率が向上する。
ちなみに小型貫流ボイラは、ボイラ技士免許を必要としない。徹底的にユーザーメリットを追求して開発を進めたことが、「1%以上の技術革新」をもたらしたのである。

小型貫流ボイラの原理

水管によって構成され、管の一方から水を送り込み、もう一方から蒸気を取り出す構造のボイラが「貫流ボイラ」。小型貫流ボイラは保有水量が少なく、早く蒸気を発生させることができる。またコンパクトでボイラの設置スペースが少なくて済む。水は、エコノマイザで排熱により温められ、さらに気水分離器でも余熱を得てボイラの水管に入り蒸気となる。川重冷熱は、小型の「WILLHEAT」、蒸気発生量が6t/時クラスの大型の「Ifrit」などをラインナップしている。

コンパクト&省エネ化を目指しました!
Kawasakiの技!

旋回+遠心分離反転式
気水分離器

99.5%以上の蒸気乾き度(蒸気と液体の混合状態である「湿り蒸気」中の蒸気の割合)を実現するのが、川重冷熱が独自に開発した「旋回+遠心分離反転式気水分離器」だ。ボイラで発生した蒸気は、気水分離器内で旋回するフィン(羽根)によって遠心スピードを上げ、反転分離器によって蒸気になっていない熱水がふるい落とされるため、乾き度が上がる。
また、気水分離器の下部ではボイラで使用する水が予め温められているため、ボイラの水管内で冷たい水と熱水が衝突して物体を壊す「サーマルショック(熱衝撃)」を防ぐことができる。

Kawasakiの技!

ボイラの燃焼制御と
水管フィン

上部にあるバーナの燃焼熱を受け、下部から給水された水が蒸気へと変わるのがボイラ。特定の高温域ができてNOxが発生しやすくならないように火炎を分散させたり、蒸気の使用量が少ない(給水量が減る)時の加熱量などを最適にするのが「PID(比例・積分・微分)制御」。「連続比例燃焼」とも言われる。「バーナとボイラ(炉)の相性」を最適化する独自のチューニング法だ。各水管は、その配置に応じて形状の異なる熱板(フィン)が設置され、チューニングの一翼を担う。

01インバータ搭載

燃焼負荷に合わせて回転数を制御し、燃焼用空気を炉内に送り込む押込送風機と、給水量を制御する給水ポンプをインバータ連続制御することで、当社従来機(KFシリーズ)と比べ、年間160万円の電力を削減できる。

潤滑油を使わないので、オイル漏れなどがなく、環境にやさしく、経済的・長期的なメンテナンスフリーが可能になりました!

02排ガス煙道

03制御盤

04エコノマイザ

エコノマイザは、ボイラ効率99%達成の“主役”で、給水とボイラから出た排ガスを熱交換して排熱を無駄なく回収する。給水が流れる伝熱管の面積を広げれば多くの熱を回収できるが、それでは装置が大きくなり、排ガスの流路面積も広がって排ガスの流速が低下し、熱伝達率が低下するジレンマがある。これを克服するために伝熱管の配列を最適化し、また伝熱管にフィンを付けてベストマッチングを実現した。イラストの「U」の字に見える部分が伝熱管。

Hydrogen Road

新たなボイラ燃料「水素」活用

川重冷熱では、次世代エネルギー「水素」を燃料とした貫流ボイラの実証試験に2018年3月から着手。すでに要素試験は成功し、現在は商品化に向けた実用化試験に入っている。水素は火炎温度が高くNOxが発生しやすいが、バーナ形状の工夫などで実用化に目処をつけている。

解説

川崎冷熱工業株式会社
営業・サービス総括室 参与
村上 敏則(左)
技術総括室 開発部 主事
田中 良知(右)
川重冷熱のウェブサイトはこちら
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川崎重工グループの和文PR誌として、多彩な製品群が陸・海・空に亘る各分野で活躍する姿と、新製品・新技術の一端をご紹介しています。

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